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HOME  >  教科書  >  シラバス  現代文013「現代文」
    平成18年度  現代文013「現代文」  シラバス(年間授業計画案)
※各シラバスは、御校の事情にあわせて、適宜加工していただいて結構です。
※ご利用は小社教科書ご採用校の先生方に限らせていただき、シラバス作成以外のご利用はご遠慮願います。
㈱右文書院 編集部

◎教科名:国語

  • 科目名:現代文
  • 履修学年:2~3年
  • 単位数:4単位(140時間)
  • 使用教科書名:現代文
  • 発行者:右文書院
  • 略称・記号:142 現文013
  • 判型・総ページ数:A5・322ページ

【教科書・教材の採択評価】

  • イ 表現・内容のわかりやすさ
  • ロ 語彙・文法・知識 レベル
  • ハ 表現・言語活動
  • ニ 図表・写真などの使いやすさ
  • ※各項目5段階評価による総合的判断(教科書採択調査資料として)

【教科書の構成について、特に配慮してある点】

  1. 長めの教材が多く、論理展開を重視した評論・論説が実質四単元と最も多く設けてあり、物語性に重点を置く小説三単元よりも教材数ともに多い。論理構築の巧みさを学ぶのに適した教科書であり、生徒はもとより教授者にも十分な下調べを要求している。また、韻文教材、特に巻頭に詩を据えて、それを言語活動教材としてあるなどは、言語学習でありながらも、言葉と情緒や意識の流れの緊密性を感得させうるものであり、存在の内と外に通底し一貫するものを追究するのに適した教科書であるといえよう。
  2. 作品としてまとまった分量があり、それぞれの作品の要となる部分を取り上げるともに、他の教材との関連性にも配慮が払われていて、学習の有機的なつながりを重視した編集がなされており、教授者の力量が試そうとするかのごとき、いかにも歯ごたえのある、したがって教え甲斐のある教科書に見受けられる。
  3. 教材本文の理解、学習の応用およびまとめなど学習の手引きとして役立ち、本文に即した学習活動が行えるよう配慮された、●学習(理解教材)/●表現の学習(言語活動教材・表現教材)が各教材末尾に設けてある。
  4. 注釈は脚注形式によっており、注解もおおむね適切であり、辞書を引けばわかる語句などは省略してあって、生徒の自主的学習に委ねるのと方針が垣間見える。
  5. 作品の読解は本文の一字一句に即して行う、という基本姿勢がうかがえ、各教材ごとに、常用漢字表内の主な漢字・語句や表現学習に必要な注意すべき語句や慣用表現が、生徒の注意を喚起するよう、†・*を付して適宜取り上げられている。なお、単元毎に中扉が設けてあり、そこで学習する予定の教材本文名が列記されている。
  6. 本文の理解に役立ち、学習意欲を喚起するようなカラー口絵や写真・図版が多く配置されており、巻末には「付録」として「日本文学関係年表」が掲載してある。

◎教科到達目標(学習指導要領)

  1. 国語を的確に理解し適切に表現する能力、伝え合う力、および近代以降のさまざまな文章や作品を理解し鑑賞する能力を高めさせるために、国語の基礎的・基本的な能力および話すこと・聞くこと、書くこと・読むことに対する応用的な能力の養成を図る。本格的なコンピュータ・ネットワーク社会の到来に伴う情報化・国際化に対応し、学校図書館やネットワークを活用した情報収集力を身につけることができるよう、教材を精選し適切に配列した。
  2. 言語を通して論理的に考える力をのばし、心情を豊かな人間性を育み、人間・社会・自然などについての考えを深め、発展させて表現する力の養成を図る。国際化が進む現代社会において、世界の中の諸言語の中の一言語としての日本語を尊重し、その言語文化を発展させる力を身につけられるよう、近代以降の文章の中から文語文を含む多様な文章を精選し、全体としての有機的関連やバランスにも配慮して適切に配列した。
    1. 国語を的確に理解し適切に表現する能力及び近代以降の様々な文章や作品を読解し鑑賞する能力を高めさせるために、国語の基礎的・基本的な能力、及び話し、書き、聞くことに対する応用的な能力の涵養を図る。
    2. 思考力を伸ばし心情を豊かにし、言語感覚を磨き、言語文化に対する関心を深め、国語を尊重してその向上を図る態度を高める。
    3. 情報化・国際化などの社会の変化に対応するために、目的や意図、相手や立場に応じて、国語を的確に理解し適切に表現する能力の涵養を図るとともに、ものの見方、感じ方、考え方を深め、進んで表現し読書することによって人生を豊かにする態度を育てる。
    4. 言語を通して思考力を伸ばし心情を豊かにすることによって、豊かな人間性の育成を図る。

  1. 「国語総合」「国語表現Ⅰ」や他の選択科目で学んだことを活かして、読解学習だけではなく、表現学習や言語活動についても同等の比重を置いて学習させる。
  2. 今次指導要領の国語科の全体の「目標」は、「国語を適切に表現し、的確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、思考力を伸ばし心情を豊かにし、言語感覚を磨き、言語文化に対する関心を深め、国語を尊重してその向上を図る態度を育てる」とあり、このうち、「伝え合う力を高める」以外の部分は、前回のものと同じであり、指導要領の眼目はこの「伝え合う力」の部分にあるので、この点に配慮して学習させる。

◎学習内容(単元・教材名)

  • 学期 1(4~7月)・2(9~12月)・3(1~2月)
  • 単位・時数 4単位・140時間
  • 単元の構成は基本的にはジャンル別であるが、巻頭や掉尾では主題的な単元名が付されており、また、その教材の配列も、生徒の発達段階および「国語総合」などとの連関(継続履修ための現代文理解編教科書としての位置づけ)が考慮されいる反面、表現、内容ともに中レベル高レベルものが比較的多く認められる。

  • 指導要領にいう「話すこと・聞くこと」「書くこと」の具体的な[言語活動]教材が精選されており、●表現の学習を設けて、読解理解学習の応用としての関連課題を解決するための問いとその留意事項、及び課題とが掲げられており、従前のように、教材本文を単に読解理解する学習だけでなく、その学習・理解を経たのちの[言語活動]学習が発展的に展開できそうな編集のあとがうかがえる。

  • [言語事項](国語による、話すこと・聞くこと、書くこと、読むことの指導の基礎をなすもの)については、表現編を除くすべての教材に、常用漢字・言葉のきまりなどが立体的に学習できるような配慮がなされている。例えば、読むことの各単元の本文のあとに設けられた●学習においても、常用漢字表内の語句を中心に、必要に応じてその意味を問うなどしてある。

  • 単元1
    • 自己との出会い  この巻頭単元には、石垣りんの「表札」と、野矢茂樹の「問いの発生」および幸田文の「ひのき」の三教材が収録されている。

    • 自己を見つめ、ものを考えること大切さに改めて光を当てることが、その学習目標といえよう。

    • 「表札」では、自分自身が何者であるかは、他から与えられるものではなく、自分自身で決めるものであるということが、平明でしかも印象的に表現されている。散文ではなく韻文を巻頭に配したのは、感性と理性は対立するものではなく、両者が互いに他を補完しあうものであることを示す格好の作品だからである。感情に流されることなく、しかも理が勝ちすぎることもなく、自己の心情を詩として表現することが可能であることを理解させたい。「自分の住む所には自分の手で表札をかけるに限る」という宣言はすがすがしく、国語学習の出発点にふさわしい。なお、「表札」は新学習指導要領で強調されている「言語活動教材」という位置づけをしてあり、「表現の学習」を活用してその趣旨を生かすよう期待されている。

    • 「問いの発生」は、ものを考えるとはどういうことなのかという、根元的な問題をテーマにした作品である。しかし、いたずらに難解な表現を用いることなく語られる内容は非常に奥の深いものであり、現代文の学習の出発点にふさわしいものである。学問は螺旋的に進むのであって、決して単純に直線的に進むものではない。問いを発してその解を得ることは、実はさらに新たな別の問いを生み出すのである。「ひのき」では「アテ」と呼ばれる、木としては使いものにならない「厄介物」に、いたわしさを感じ、共感している作者の心を読みとらせたい。人間存在に対する、深い洞察力の大切さに思いをいたすことも、現代文学習の柱の一つであることを考えれば、巻頭の単元にこの教材を配置したことが理解されよう。

  • 単元2
    • 小説(1)  この単元には、井上ひさし「ナイン」と、中島敦の「山月記」の二教材が収録されている。

    • この単元では小説教材による学習が求められている。文学的な作品の学習目標は、人物、情景、心情などを的確にとらえ、その表現を味わう力を養成することを通じて、深い人間理解を身につけることにある。

    • 井上ひさし「ナイン」は、新道少年野球団の九人のその後の人生模様が生き生きと描き出されている、現代社会を題材とした作品である。その野球団の主将だった正太郎は、社会に出てからさんざん旧友たちに迷惑をかけていたが、しかし、かつて時間と空間を共有した仲間たちは彼に対して暖かい気持ちを持ち続けていた。時間の経過はその野球団の少年達の町も人間も変えてしまったが、それでもなおかつ人と人とのつながりはかつてと変わらぬ部分がある。人間理解と社会の急激な変貌という大きなテーマを身近な題材を用いて高校生にも共感しやすい形で表現している。

    • これとは好対照に、中島敦の「山月記」は、古代中国を舞台とする、伝奇的な装いの作品である。漢語的な語彙や文語的な表現があるが、その文体はきびきびとしており、朗読することの喜びを与える魅力的なものとなっている。「ナイン」の読解を通じて得られる暖かい人間という側面とは逆の、ある種の悲劇性を扱っているが、人間存在のもう一つの姿を活写したこの作品は永く生徒の心に残るはずである。近代以降の小説の中で異彩を放つ中島敦の文体は、内容と共によく味わわせたい。

  • 単元3
    • 評論・論説(1)  この単元には、三浦雅士の「考える身体」と、山口昌男の「遊び」の二教材が収録されている。

    • 評論は、物事の善悪・価値などについて批評し論じるものであり、論説は事物の内容や理非を論じ、自説を述べたり説明したりするものである。前者は題材に対する批判性に力点があり、後者は題材の解説に力点がある。とはいえ、両者の区別は必ずしも分明とは言えない。この単元で扱う「考える身体」はどちらかと言えば評論に近く、「遊び」は論説の色合いが強いと言えよう。

    • 「考える身体」は、近年哲学や社会学の分野で注目されている「身体論」と呼ばれるものである。これはこれまで純粋に精神的なものと考えられてきたことがらが、実は身体的なものを条件としていたり、あるいは身体的なものとして論ずるべきだと考えられるようになってきたということである。「ナンバ歩き」という明治以前には広く行われてきた歩き方が、近代の中で急激に失われ、西欧と同じような歩き方をするようになった。自然な動きと考えられる身体の動きも、実は歴史的・文化的な背景があることに気付かせる評論である。

    • 「遊び」の方は、文化人類学の成果をもとに、「湿った文化」と「乾いた文化」という文化類型を提示し、その枠組をもとに、日本の文化についての鋭い分析を行っている。「考える身体」においても、世界の多様な文化、とりわけ西欧近代以降の文化を一つの対照軸として日本文化の姿をよりゆがみの少ないものにしようという視点に立つ評論・論説である。この二つの評論・論説で用いられている「身体」、「遊び」という重要な鍵となる考え方は、生徒の世界の見方を広げることに寄与するはずである。

  • 単元4
    • 短歌・俳句  この単元には、以下の作者の作品がおのおの一首ずつ収録されている。

    • 世界でもまれな短詩形の文学である短歌と俳句は、近年新しい流れも吹き込んでいる分野である。また、日本語以外の言語でも、この短歌・俳句が作られている(言語の違いから厳密に言えば「短歌・俳句」とは呼べないが)。このような新しい流れの中にあって、その源流である近代の作品に触れることは重要である。

    • 短歌では正岡子規の革新運動を中心として写実的歌風が広まり、その門下の伊藤左千夫、その系譜を継ぐ島木赤彦、長塚節、土屋文明の作品を収めた。さらに古典研究に造詣の深い佐々木信綱の作品と同門の木下利玄の作品を収録した。これらの近代を代表する歌人達の作品を鑑賞することを通じて、短歌の基本的な特色を学習し、現代の新しい作品を自らの力で読み解く架橋としたい。

    • 俳句については、短歌同様革新運動を目指した子規門下の高浜虚子の影響を受けた村上鬼城、飯田蛇笏、川端茅舎、松本たかしら、ホトトギス派の代表的作家の作品を収めた。また、子規門下から出て新傾向俳句を提唱した河東碧梧桐、水原秋桜子門下で俳句に自己の生活や人生を読み込んだ石田波郷、荻原井泉水の指導を受けて後に自由律俳句の中心的人物の一人と目される種田山頭火の作品を収録した。近代を中心とした短歌・俳句を読むことを通じて、韻律に対する意識を喚起し、言葉の感覚をとぎすませ、感受性を養いたい。

  • 単元5
    • 小説(2)  この単元には、夏目漱石の「こころ」が収録されている。

    • 高等学校教科書の定番とも言える作品であり、そのことに対する批判もあるが、深い感銘を呼ぶ作品であることにはまちがいない。この作品の主題が奈辺にあるのかということについては、現在でもまだ議論がつきないようである。エゴイズムをめぐる葛藤をあげる者もあれば、あるいは人間の孤独についての小説であると述べる者もいる。生徒たちは、もっと皮相な恋愛の三角関係の物語としてまず受け取るかもしれない。その表面を見ただけの読み方にとどまることは許されないとしても、多様な読み方はむしろ歓迎すべきものであり、一つの読み方を上から無理に強要することは好ましくない。むしろ、自分自身の読み方を、読解を通じて自分でより深めていくということが大切であろう。いずれにせよ、虚構を通じて人間の心の中を描き出すことができるのだということを、この作品を通じて学ばせたい。

  • 単元6
    • 評論・論説(2)  この単元には、文化人類学者である川田順造の「『はい』と『いいえ』のあいだ」と、政治思想史の丸山眞男の「『である』ことと『する』こと」の二教材が収録されている。

    • 両者の扱っているテーマは異なっているが、二つの対立するものを対象として、議論を進めるという方法をとっている。このような相対立するものをまず提示して、その分析を行うという方法は、有効な方法である。二項対立の議論はときに、第三、第四の軸を見失わせる危険もはらんでおり、注意が必要だが、収録した二つの文章では、過度の単純化をせずに説得力のある論理展開になっている。

    • 「『はい』と『いいえ』のあいだ」では、自らの体験に基づいて世界の他の地域との比較の中から、日本語の応答の仕方の特徴を浮き彫りにしている。ここで用いられているのは、日本と別の世界という軸である。西欧世界と日本という対立軸だけにとどまらず、西アフリカのモシ族の例にも言及しており、現代社会の特徴の一つである多元化、多文化を視野に入れている。

    • 「『である』ことと『する』こと」は、発表された時代は決して新しくはないが、テーマそのものも、そして論述の仕方も決して古くなっていない。ここで取り上げられている自由の問題は、普遍的なテーマであり、何度でも立ち戻って考えなくてはいけないことである。そして、その背景として考えられている「である」社会と「する」社会の問題は、現在でもまだ解決されていないと言えよう。このことを考えることが、日本の近代化という大きな問題群への関心への刺激となることも期待できるだろう。

  • 単元7
    • 随筆・随想  この単元には、志村ふくみの「紫匂ふ」と、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の二教材が収録されている。

    • おりおりに思ったこと、折にふれての感想を記した随筆・随想として取り上げた、「紫匂ふ」「陰翳礼讃」はともに、伝統的な文化に関する含蓄のある文章である。めまぐるしく変化する現代社会にあって、いたずらに新奇なものを追求するのではなく、むしろ、これまではぐくまれた、伝統的なものを再発見することは意味あることである。扱われているテーマにふさわしい文体・表現を味わうのに適切な作品である。

    • 「紫匂ふ」は、染織家としての長い経験に裏打ちされた、感銘深い文章である。日本の伝統として用いられてきた「色」の世界を「匂ふ」という語の意味を縦糸として、織物を織るようにして描く筆者の確かな筆致を、丁寧に読ませたい。

    • 「陰翳礼讃」は、定評のある文章である。日本料理を導入として、日本家屋について細やかに筆を進めていく表現は、不注意な読み方を許さない厳しさもある。高校生にはやや難解かとも思われるが、しかし、このような筆の運び方、このような見方があるということに気付かせることも可能な作品である。

  • 単元8
    • 小説(3)  この単元には、遠藤周作の「沈黙」が収録されている。

    • すでに、「ナイン」、「山月記」、「こころ」という小説を読み進めてきた生徒たちに、さらに人間の内面の問題を別の角度から考えさせる作品と言えよう。キリシタン弾圧の中での司祭ロドリゴとキチジローという二人の対照的な人物の心を読むとき、人間の弱さと強さについて考えを深めることができるはずである。現代とはまったく異なった時代背景であり、また、状況設定でもあるが、文学的な虚構はそのような違いを超えて人間の普遍的な問題に迫ることができることを確認させたい。

  • 単元9
    • 評論・論説(3)  この単元には、和辻哲郎の「面とペルソナ」と、小林秀雄の「無常といふこと」の二教材が収録されている。

    • 両作品とも書かれてからすでに相当の時間が流れている。しかし、丸山眞男の「『である』ことと『すること』」がそうであったように、時代を超えて読み継がれるべき文章というものは確かにある。この両作品は扱っているテーマは異なるが、歳月を経てもその輝きを増すことはあっても、決して減じることのない作品である。高校生には歯ごたえがあるかもしれないが、しっかりと読ませたい。

    • 「面とペルソナ」は、「問題にしない時はわかりきったことと思われているものが、さて問題にしてみると実にわからなくなる」という一文から始まる。巻頭教材「問いの発生」と響き合うこのような思索の姿勢は、勝義における哲学のすがただと言えるだろう。顔面を通して「人格」の本質を明らかにしようとするユニークな着想は、その後の思想家によって発展させられている。

    • 「無常といふこと」では、独特のひねりのある文体を通して語られる思索の後を、一つ一つ解きほぐしながら読解させたい。表現という観点からも、多くのことを学ぶことができるはずである。また、日本文化、古典に関する生徒の関心を高めるための、古典と現代文の融合的な要素もある。

  • 単元10
    • 近代の文章  この単元には、指導要領の要請「近代以降の様々な種類の文章」に応えるべく、近代以降の文語文として、森・外の「舞姫」、樋口一葉の「塵中日記」、国木田独歩の「武蔵野」の三教材が収録されている。

    • いずれも明治時代の文語文とはいえ、その文体は作品ごとに大きく異なっている。それは、一つには作品のジャンルによるものであるが、近代日本語の書きことばがまだできあがっていなかったということにもよるだろう。また、それぞれの作家の資質の違いということも大きく作用しているだろう。現代の高校生には難解な語彙が含まれるし、抵抗があるかもしれないが、現代の書きことばの源流を知るという意味でも、言語変化ということを見つめ直すためにも寄与するところ大であろう。

    • 「舞姫」は、もちろん小説単元に分類することも可能であるが、あえて、近代の文章という枠組の中で取り上げることにした。近代小説の古典として、長く読み継がれてきた作品であり、書かれてから百年以上の時間が過ぎ去った後も、その命脈は保たれている。それは、おそらくは一つにはこの小説が一種の美文で書かれているためであろう。声に出して読んでみると、漢文を朗読したときに得られるような香りがあることは、多くの人々の指摘するところである。小説のプロットはそれほど複雑ではないため、ある程度の古典文法の知識はもちろん必要ではあるが、生硬な語彙を克服しさえすれば、読み通すことができるはずである。太田豊太郎という人物の行動と考え方は、現代の目からは批判されても仕方がない点が多々あるが、明治という時代を十分に押さえた上で、考えさせたい。

    • 「塵中日記」は、和文に連なる文体で、生徒は古典だという感想をもらすかもしれない。むしろ漢文訓読風の文体で書かれた「舞姫」よりも抵抗があるかもしれない。しかし、両者が書かれた時期はほぼ同じである。現代でももちろん書きことばの文体は一様ではないが、明治時代の中葉では、その差がきわめて大きかったことを知ることになるだろう。

    • 「武蔵野」は、ここに収録したものの中では、最も現代の文章に近いという印象を受けるだろう。しかし、実はこれらの三作品が書かれた時期は十年と隔たっていないのである。現代仮名遣いを用いた、いわゆる口語文が本格的に書かれるようになるのは戦後のことであり、書きことばにおいて口語体が採用され、普及した結果、現在では文体の差はあったとしても、おおむね均質な書きことばが用いられている。「武蔵野」に描かれた世界そのものも大きく変貌しているが、文章も大きく変貌したことに気付かせたい。

  • 単元11
    • 自然と環境  この単元には、地理学・文化人類学者の岩田敬治の「自然のありか」と、生物学者の中村桂子の「科学が物語る」の二教材が収録されている。

    • 実質的な読解教材の最後を締めくくるに当たって、極めて現代的なテーマの文章を選び、自然と環境という単元名が付されている。一年あるいは二年に亘って学んできた現代文の学習者は、その過程で身につけた力で、自分で自分にふさわしい現代の日本語の文章を読み解く用意ができているはずである。これら二つの文章は、ジャンルとしては、随筆・随想あるいは評論・論説に分類されるべき文章である。いわば、これまで学んだことの応用編として読まれるべき文章でもある。

    • 「自然のありか」は、人類の重要なテーマである環境や自然保護を考える場合に押さえておくべきことをわかりやすく述べている。人間が手を加えていない状態を自然だと我々は考えているが、実はその多くは人間の手が加わった半自然にすぎないという。いわば常識を疑うところから、新たな世界が開けてくるということを、文化人類学の知見を織り交ぜてと述べている。

    • 「科学が物語る」は、最先端の生命科学と宇宙論の二つの話題をとりあげ、現在、我々が科学だと思っている「科学」が、必ずしも初めから今のようなものであったわけではないということをわかりやすい文体で述べている。「最近の科学の欠点は、物語性を失ったことにあるような気がします」という言葉は、再度かみしめてみるべき言葉である。

  • 単元12
    • 実用的な文章  この単元には、物理学者木下是雄の「すらすら読める文・文章」と、テクニカルライター高橋昭男の「仕事文の書き方」の二教材が収録されている。

    • 学習指導要領の改訂に伴っての要請「現代の社会生活で必要となる実用的な文章も取り上げ」られた、表現に関わる教材である。

    • 「すらすら読める文・文章」「仕事文の書き方」とも理科系に分類される人々の手によるものである。現在求められているのは、文学者や人文系の学者の文章論ではなく、事実をわかりやすく書くための文章論であり、そのためには、むしろ文章とは縁遠いと見做されることの多い、理科系の人々のものをあえて選んだ。コンピュータ技術の発展に伴って、限られた知人に対する文章ではなく、不特定多数を読み手とする文章を書く機会が多くなっている。読むだけではなく、書くという要素も現代文の学習の重要な柱であり、最終単元に配置してあるが、区切りのよいところで扱うという方法も考えられるだろう。


  • ◯全般的な学習活動
    1. 日常生活ではあまりなじみのない専門用語や慣用表現などについて、辞書・事典などで意味を調べ、本文に適した意味を捉える。
    2. 読解を正確に行い、要約し、それぞれの内容を的確に把握する。
    3. 特に印象の深かった作品や箇所について、自分の考えや意見をまとめ、クラスなどで積極的に発表する。
    4. 優れた表現や構成の巧みさを指摘するとともに、登場人物の言動を通して、会話文や話題や論理の展開について整理する目を養い、彼らの心理や感情、考え方を理解してまとめる。
    5. 作者・筆者の叙述目的を指摘し、どのような目的に添って描かれたものか指摘する。
    6. 作者・筆者の、自然観照眼や人間観察・描写の仕方・論理構築やその展開の仕方の特色やその優れた点を、本文や文献を参考にして指摘し、彼らの考え方や思想・心情について、自分の意見や考えをまとめ、発表する。
    7. 評論・論説はもちろんであるが、随筆・随想のジャンルに含まれている教材でも、専門家が書いたものについては、下準備として該当分野の常識的・基礎的な知識を復習しておくよう心がける。
    8. 文芸評論と諸科学(哲学・法学・生物学など)評論について比較検討し、特に印象に残った評論について、意見文を書いて発表する。
    9. 「韻文(短歌・俳句・詩)」教材から実作の要点をまとめ、自作したものをクラスで発表し相互批評する。
    10. 既習の作品の中から、論表してみたいテーマなどを選んで評論文や随筆文を書き、発表する。
    11. 同一作者・筆者の作品は大学入試などにも出題されることが多いので、本文以外にも目を通しておく。

◎評価ポイント(観点・重点)

  • 評価規準(方法)A(学習者の能力)
    1. 関心・意欲・態度
    2. 思考力・判断力
    3. 資料活用の技能・表現力
    4. 知識・理解
  • ◇学習進度確認小テスト(月毎)
  • ◇中間考査・期末考査等の結果

◎学習活動

  • 現代文の授業は、意見百出する場面もあり、教授者の一方的な押し切りや、反対に生徒の意見に重きを置きすぎて、ともに中途半端で物足りない印象を残すだけの結果に陥ることもまま見受けられる。とくに他教科(物理・化学などの理系教科)の内容にからむ教材については、教授者も下準備として一般常識レベルは再確認しておくとともに、朗読テープやスライドなど視覚・聴覚的側面を補強して、その弊を軽減したり、野外学習なども取り入れて学習者の興味・関心を持続させるような工夫を様々に凝らされたい。
  • ◇朗読・話し合い・感想文・課題レポート提出等の言語活動を積極的に行う。
  • ◇インターネットも参考資料の検索など、適宜活用する。
  • ◇図書資料の活用(学校図書室の利用)。
  • ◇視聴覚教材(スライドなど)の活用(視聴覚室の利用)。
  • ※回数、学期・月などは、学校個々の事情に合わせて、適宜お書き込み願います。

◎学習方法

  • 教科書はもちろん、副教材・視聴覚教材等を活用し、さらにはインターネット検索や学校図書館の図書資料等の活用して、積極的に学習する。

◎学習上の留意点(生徒への注意事項)

  • 授業では必要に応じて板書やプリント等を配布するので、それらを活用するためにも、なるべく科目ごとのノートやファイルとじ等を用意すること。
  • 教材によっては、他教科の知識があると理解のすすむものもあるで、学習の各場面に合わせて、例えば生物図表便覧・世界地図帳等を携行、参照するよう心がけること。
  • レポート提出や発表においては、自分の考え・意見をまとめ、それが表現できるよう心がけて学習する。なお、レポートの課題や参考資料等について相談等あれば、教科担当者に尋ねること。
  • 学校行事や長期休暇などがあるので、授業進度や考査範囲などについては、教科主任(責任者)を中心に見直しを行い、その都度知らせるので、注意すること。

◎評価方法について

  • 授業への取り組み、レポート、定期考査等を中心に上記評価基準Aの観点によって、総合的に評価する。
  • 作品は互いに関連し影響しあっている側面が強いので、その関係に留意して学習する。また、学習の評価は、定期考査に加え、レポートへの取り組み姿勢や朗読・課題発表等に対しても行う。特に、自分なりの考えをまとめ、それをまとめたり書いたりして、積極的に発表できるかなどを、総合的に勘案して判断する。

学期 時数 単元名 教材名 評基A
計(40)
1―自己との出会い
 
 
2―小説(1)
 
3―評論・論説(1)
 
4―短歌・俳句
表札
問いの発生
ひのき
ナイン
山月記
考える身体
遊び
(短歌)くれなゐの
(俳句)春寒し
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
12
計(55)
5―小説(2)
6―評論・論説(2)
 
7―随筆・随想
 
8―小説(3)
9―評論・論説(3)
こころ
「はい」と「いいえ」のあいだ
「である」ことと「する」こと
紫匂ふ
陰翳礼賛
沈黙
面とペルソナ
無常といふ事
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
17・12
計(45)
10―近代の文章
 
 
11―自然と環境
 
12―実用的な文章
舞姫
塵中日記
武蔵野
自然のありか
科学が物語る
すらすら読める文・文章
仕事文の書き方
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  
  1    2    3    4  

●付録
日本文学関係年表  カラー口絵 13葉